相続税法の改正は、どのような影響があるか


平成27年に行われた相続税法の改正は、納税者に大きな影響を与えるものでした。その内容は大きく分けて4つあり、一つ目は基礎控除額の大幅な減額、二つ目は未成年者控除および障害者控除の増額、三つ目は小規模宅地等の特例の限度面積および適用面積の拡大、四つ目は税率の区分変更となります。

その中でも最も大きな改正点は基礎控除額の減額です。これは、それまで5,000万円に法定相続人一人につき1,000万円を加算した金額であった控除額が、3,000万円に法定相続人一人につき600万円を加算した金額に減額されました。例えば、相続財産が5,000万円ある被相続人が亡くなり、配偶者と一人の子どもが相続する場合、それまでは基礎控除額の範囲内として相続税は非課税でしたが、平成27年以降は基礎控除額が4,200万円となるため、800万円の課税価格に対して相続税が掛かります。このように基礎控除額が4割も減額された結果、平成27年に相続税の課税対象となった人は前年と比べて1.8倍も増加し、課税価格は1.26倍、税額は1.3倍の増加となり、それだけ納税者に負担が増加する事となりました。

控除額の増額がされた

しかし、未成年者控除および障害者控除では、それぞれの控除額が増額された為、納税者にとっては負担が減る事となりました。それまでの控除額は、未成年者控除では未成年の相続人が20歳になるまで一年につき6万円、障害者控除では障害者である相続人が85歳になるまでの一年につき6万円(特別障害者は12万円)で計算した額でしたが、平成27年以降はそれぞれ一年につき10万円(特別障害者は20万円)に改正されました。これらの控除は税金から直接差し引かれる税額控除である為、減税に大きな効果があります。

また、小規模宅地等の特例では、特定居住用宅地等の限界面積が、それまでの240平方メートルから330平方メートルに拡大されました。さらに特定居住用宅地等と特定事業用宅地等がある場合、それまで合計面積のうち400平方メートルまでとされていた限界面積が730平方メートルまで拡大され、居住用宅地と事業用宅地の双方の限度面積まで適用できるようになりました。小規模宅地等の特例は、宅地等の評価額を最大80%も減額できる節税効果の高い制度である為、適用を受ける納税者にとって影響のある改正と言えるでしょう

一部の層に大きな影響が

なお、税率の区分変更は、それまで1億円超3億円以下の区分の税率は40%、3億円を超える区分の税率は50%でしたが、平成27年以降は、1億円超2億円以下の区分は40%、2億円超3億円以下は45%、3億円超6億円以下は50%、6億円を超える時は55%となりました。この改正は、課税価格が低い納税者には影響はありませんが、富裕層にとっては増税となり、基礎控除額の減額と合わせて大きな影響があります

このように、相続税法の改正は基本的には増税であり、減税となる一定の納税者にとっては減税分で増税分をカバーできるような形となっています。いずれにせよ、課税対象者の範囲が拡大する事から、事前の相続税対策が重要となります。

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