相続において、被相続人が残した遺産をどのように分割するかは重要問題です。遺産分割は、しばしば相続人同士の争いとなり、骨肉の争いと呼ばれるほど人間関係が一変する問題でもあるため、民法ではどの相続人がどれだけ相続するのかを法定相続分として定めています。これにより同じ相続順位の相続人が複数いる場合、相続人は民法第900条に定められた割合(法定相続分)の相続権を有する事になります。
法定相続について
法定相続分は相続人によって異なりますが、その相続人は、まず被相続人の子供、次に被相続人の直系尊属(被相続人の両親や祖父母など上の世代の者)、最後に被相続人の兄弟姉妹となり、配偶者は必ず相続人となります。ここで注意しなければいけない点は、子供には民法第886条により出生前の胎児も含むという点です。
ただし、胎児が死亡して生まれた時は子供に含まれません。また、被相続人が死亡する前に相続権を喪失した時は、その相続人の子供が相続人となる(代襲相続する)点にも注意が必要です。この相続権を喪失した時とは、相続人が死亡している時、民法第891条に定める相続人の欠格事由に該当する時、民法第892条に定める推定相続人の廃除が認められた時を指します。なお、代襲者が相続権を喪失した時は、その者の子供が再代襲する事になりますが、代襲者が被相続人の甥や姪である時は、再代襲は認められていません。
相続人が確定した後に、その相続人に応じて法定相続分が確定します。まず、相続人が子供および配偶者であれば、それぞれの相続分は2分の1ずつとなり、相続人が被相続人の直系尊属および配偶者であれば、直系尊属は3分の1、配偶者は3分の2となります。相続人が被相続人の兄弟姉妹および配偶者であれば、兄弟姉妹は4分の1、配偶者は4分の3となります。
その他、様々なケース
なお、婚姻関係のない両親から生まれた子供(非嫡出子)の相続分は、嫡出子のそれと比べて2分の1とされてきましたが、民法改正により平成25年9月5日からは嫡出子と同じ割合となりました。また、配偶者を除く同順位の相続人が複数いる場合の相続分は、その相続分を相続人の数で割った割合となります。例えば、1,000万円の遺産を子供2人が分割する場合は500万円ずつとなり、配偶者と子供2人の場合は配偶者が500万円、子供は250万円ずつとなります。
さらに、あまり多くないものの、異父母の兄弟姉妹がいる場合は注意が必要です。例えば、被相続人に配偶者や子供がおらず、両親も死亡している場合、第三順位として兄弟が相続権を有します。しかし、兄弟のほかに異母兄弟がいる場合は、血縁関係がある異母兄弟にも相続権が発生する事になり、その相続分は兄弟の相続分の2分の1となります。
つまり、このケースでは兄弟が取得できる遺産の割合は3分の2となり、異母兄弟が取得できる遺産の割合は3分の1となります。このように法定相続分は遺産分割において重要な問題となるため、遺産の範囲や価額と同様に慎重に調査する必要があります。