自分が遺産を残して、相続をさせたいという立場の場合、そこに相続人がいるかいないかでは手続きに大きな違いが出てきます。自分の場合は誰が財産相続を行うことになるのか、誰にどのくらい相続をさせたいのか、ある程度の年齢になったら手続きをよく知って、一度は考えてみることも必要になるかもしれません。
相続人がいる場合
自分に配偶者や子供などの相続人がいる場合(法定相続人がいる場合)、主にはその者が相続人となって財産相続を行い、その際の手続きも進めていくことになります。この法定相続人というのは、何もしなくても民法で相続の割合が定められていて、財産相続をすることができる者たちです。
基本的なところでは、自分に配偶者と子供1人がいる場合、配偶者は2分の1、子供も2分の1で相続します。そして、この配偶者と子供が死亡届の提出の段階から財産の調査、被相続人の確定申告や相続税の納付などの手続きの一切を進めることになります(弁護士などへの依頼も含めて)。
法定相続人がいる場合には、あとを任せることができるので何もしなくとも大丈夫とも考えがちですが、最近ではやはり遺言状を残すことが望ましいという流れになっています。相続させる割合を変更したいという場合や、財産が不動産ばかりで分けるのが難しい場合、また、遺産を巡ってトラブルになることも増えてきているからです。
具体的な手続き
このように、法定相続人がいる場合には遺言状を残すのが望ましいとはいえ、何もしなかったとしても財産相続は進められます。
しかし、自分に相続人がいない場合にはそのようにはいきません。相続人がいない場合には大まかに、以下のように手続きが進んでいきます。
1.利害関係者や検察官によって申し立てがされ、「相続財産管理人」が選任されます。
2.選任された相続財産管理人は債権者や受遺者に対しその旨を公告し、同時に相続人を捜索します。
3.結果的に相続人がいなければ、特別縁故者が遺産分割の申し立てを行います。
4.家庭裁判所によって特別縁故者への財産分与が認められたら、相続財産管理人は遺産分与を行います。
5.必要な全ての支払いを終えた後、残りがあればその財産は国庫に帰属します。
つまり、相続人がいない場合には最終的には国にその財産が帰属することになります。自分には誰も相続人がいないから、トラブルになることもないし大丈夫だろうと考える人もいるかもしれませんが、何もしなければそのまま国に財産が帰属しますので、別の人に渡したい、とか何か社会に役立つように使ってほしいという思いがあるのであれば、その意思は必ず遺言状に残しておく必要があります。
遺言状で残すことで、相続人ではないけれど、例えば生前自分の世話をしてくれた人や、お世話になった人にも財産を残すことができます。また、公共の団体や任意の団体に寄付を行うこともできます。
まだ早い、と思いがちな財産相続ですが、自分の財産の使い道や相続人がいるのかいないかを含めてよく考えて、後の人のためにも遺言状を残しておくことも必要でしょう。