遺産を寄付すると相続税が非課税になるだけでなく寄付金控除も適用可能


たくさんの財産を持っている人の中には、死後その財産を自分の家族や親戚に与えるだけでなく、団体に寄付することを考えている人もいます。日本の税制度では、寄付をすると相続税、所得税、住民税で優遇措置を受けることができます。したがって、寄付は有効な節税対策となりますが、一定の要件を満たしている寄付のみが対象となっていることに注意が必要です。

優遇措置とは

相続税の優遇措置について説明すると、相続財産を寄付したり、遺贈を行った場合に、一定の要件を満たしていればその財産に関する相続税は非課税、つまり税額計算をするときに遺産総額に含めなくても良いことになっています。相続した財産を寄付する場合は、申告期限までに国、地方公共団体、特定の公益法人のいずれかの団体に行った寄付が非課税の対象となります。ここでいう特定の公益法人とは、教育や科学、福祉、医療などの振興などに貢献する事業を行っている法人のことで、認定NPO法人や国立大学法人、社会福祉法人、独立行政法人、公益社団法人などが該当します。一方、遺贈の場合は、前述の3種類の団体だけでなく、通常のNPO法人や、非営利型の一般社団法人および一般財団法人が寄付先であっても非課税となります。いずれのケースであっても、相続税の優遇措置を受けるためには税務署への申告が必要であり、その際には寄付先が作成した寄付を受けたことを示す書類や、寄付した財産に関する明細書などの添付が必要です。

寄付金控除を適用する

相続税の優遇措置の適用条件を満たしている場合は、所得税と住民税で寄付金控除を適用することができる場合が多いです。所得税の寄付金控除は、1月1日から12月31日までの特定寄付金の合計額と、1月1日からの1年間の総所得金額の4割に相当する金額のうち、どちらか少ない方を選び、そこから2,000円を差し引いた後、100円未満を切り捨てて計算した金額が控除額となります。ただし、認定NPO法人や特定の公益法人に対して行った寄付については、税額控除を選択することができ、前述の所得控除額の4割に相当する額と、所得税額の25%に相当する額のうち、どちらか少ない方を税額から差し引くことができます。
寄付金控除を適用したい場合は相続税のときと同じように、寄付した財産の明細書や、寄付先が控除対象の団体であることを証明する書類などを添付して確定申告書を提出する必要があります。寄付金控除を適用すると税の還付を受けられることがあるので、遺産の寄付を行った場合はいちど所得税額を自分で確かめるか、税理士に相談して確かめてもらいましょう。
一方、住民税は所得割の部分が控除の対象となっており、2018(平成30)年度からは1年間の寄付金の総額から2,000円を差し引いた金額の、道府県民税については2%に相当する額、市町村民税については8%にあたる額を税額から差し引くことができます。適用するためには市町村役場に住民税の申告をする必要がありますが、税務署に所得税を確定申告すれば、住民税の寄付金控除も適用されます。

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